コミカライズではなく、オリジナルの原作を冲方丁が制作した漫画は現時点では『ピルグリム・イェーガー』と『シュヴァリエ』の2作品である。

『ピルグリム・イェーガー』はヤングキングアワーズにて伊藤真美が作画を担当して連載された。6巻にて第1部終了。e0128729_2257429.jpg


2003年に『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞を受賞し、作家として人気を獲得していくこととなった冲方丁であるが、『ピルグリム・イェーガー』の連載開始時点では、初期の長編『ばいばい、アース』が発売されていたくらいであり、おそらく作家としてはほぼ無名だったはずである。(現在は文庫で容易に入手できる『ばいばい、アース』も当時は特殊な形態で発売されたため、極めて入手困難だった)
しかしながら、この時点で既に、細部にこだわる、熱いシナリオの作り方はほぼ完成されていたようで、伊藤真美の作画と相まって半端ない面白さをもつ作品となっている。


物語は、宗教改革前夜のイタリアを舞台に、免罪符を求めて旅をする異能の芸人アデールとカーリンが、ローマ焼却を目論む“七人の大罪者”と、それを阻止しようとする“三本の釘”および“三本の釘”の手駒たる“三十枚の銀貨”の戦いに巻き込まれていく話である。

なお、“三十枚の銀貨”の中には、イエズス会のフランシスコ・ザビエルやイグナティウス・デ・ロヨラや芸術家のミケランジェロといった実在の人物も含まれている。
とはいっても、ザビエルは美少年、ロヨラは蹴技使い、ミケランジェロは怪力マンと特殊なキャラ設定がなされているのだが。


この作品のなりよりの面白さは、当時の複雑な社会情勢を緻密な考察をもとに再現した世界観の中で、登場人物がほぼ全員、別の思惑をもって行動していることである。
まったく別々の目標をもって集う人々は、それゆえに疑心暗鬼に陥ったり、それを超えて絆を手に入れていったりしてる。
また、後の『マルドゥック・ヴェロシティ』につながるような、異能力者同士の壮絶なバトルも大いに魅力的である。

キリスト教が腐敗していく中で、信仰と人間の尊厳の在り方が話の重要なテーマとして何度も提示されており、教会も権威も関係なく、ただ純粋な信仰に生きるアデールと、権威を恐れ、人間としての弱さをもつカーリンはその対になる象徴であったと考えられる。e0128729_22595938.jpg


原作だけでなく作画を担当した伊藤真美も超絶な作画能力をフルに稼働。
伊藤先生の他作品を読んだことない(というか、本格的な連載はほとんどしていない)が、構図やコマ割りにめちゃめちゃこだわる人のようで、ダイナミックな演出はとても素晴らしいと思う。
敵も味方も聖書の言葉を引用しながら戦う重苦しい雰囲気の表現が上手い。

この作品のおかげで、「汝、今宵の鶏鳴を待たずして、三度我を否むべし」という聖書の一節を覚えた。確実に誤った印象の下での知識だし、いったいいつ使うつもりなのかという知識ではあるけど。


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聖書の言葉や、タロットカードからつけられた“三十枚の銀貨”のコードネーム、多数の登場人物と、複雑なヨーロッパの政治情勢と、理解しやすい漫画ではないが、はまる人は相当はまり込む魅力に溢れた作品である。
立ち読みとかより、家でじっくり読むことをおススメしたいですね。

6巻で第一部終了後、2年超連載がとまったままである。
冲方丁は現在雑誌「野生時代」で『天地明察』を連載中な上に、今年『マルドゥック』シリーズ最終章および『シュピーゲル』シリーズの最終章の開始を予告しており、09年中の再開は厳しいような気もするが、そろそろ続きをやってほしいものである。伊藤先生の仕事の都合もあるだろうし、できるときに是非!

なんせ、第一部では、“三十枚の銀貨”のうち半数はまだ未登場だし、“七人の大罪者”にいたっては、まだ1人しかでていないオープニングが終わったばかりなのだから!

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# by dentaku_no_uta | 2009-02-10 11:43 | 冲方丁

2006年放送
サンライズ/谷口悟朗監督

今更、『コードギアス』、それも第一シリーズの感想という中途半端に時期がずれてる感がえらく恥ずかしい今回。


観終わった感想としては

面白かった。
いや、皮肉ではなく。

確かに折にふれて細部がめちゃめちゃアバウトになるし、演出過剰なキャラクター達のセリフや仕草はどうしようもなく笑ってしまったけど。

本質的にひねくれ者な私は、あの高笑いを観て「ルルーシュ!ルルーシュ!ワー!!」とはなれないのだ笑。

ただ結局、ああいった色々とオーヴァーな雰囲気が『コードギアス』を『コードギアス』たらしめていたのだろうし、話題にもなったんだろうなぁ。


もうネットとかでも散々話題になったあとだろうから、あらすじとか考察はする意味もなかろうて。

吹き出したり、テレビに向かってツッコんだりしながら観ていたにもかかわらず、22話「血染めのユフィ」を観て本気でショックを受けてしまい、翌日あたりは凄い凹んでた。
「何?何かあったの?」と人に聞かれても
まさか「ユーフェミアがね…」などと語るわけにもいかず。

どんだけ入り込んでんねん。



第2シリーズがあることを前提にしたエンディングだから、最後に関してはあまり思うことはなかったけど、あの盛り上がりは良かった。
やっぱり谷口監督は徹底的にエンタテイナーなんだと思う、良きにせよ、悪しきにせよ。


好きな登場人物は技術部のロイドとセシル、あとはディートハルト。
なんか全体的に、BLにするために生まれてきたキャラばっかりだったような…。

あと後半のOPは好きだった。
…皮肉ではなく。
主題歌「解読不能」と、グラフィックが良かったと思うんだけど。特に、ユーフェミアとスザクが手を取ってグルッと回ってからのスザクの顔のアップ、切り替えて技術部の3人のところあたりが。
歌詞カードを見ても、何言ってるのかは聞き取れなかったけどね。(何度聞いても「等間隔」が「トォカンカァ」にしか聴こえませんから~!)



とりあえず、レンタルが旧作扱いになったら2期も観てみる。
その前に気になってネタばれをネットで見てしまいそうな気がするけど。

まだ観てない人はウィキペディア見ると終わるから気をつけて!

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# by dentaku_no_uta | 2009-02-02 17:24 | アニメ

『ヒロイック・エイジ』は2007年に放映されたTVアニメ。2004年のヒット作となった『蒼穹のファフナー』のスタッフが再結成する形で制作された。

昨年1月に『マルドゥック・スクランブル』(ハヤカワ文庫JA)を読んで以来、冲方さん大好き!なんで、マルチに活動する小説家の冲方丁が関係したモノは全部読もう、観ようと思っていた。

シナリオに関与したTVアニメは3作。
『蒼穹のファフナー』『ヒロイック・エイジ』『シュヴァリエ』。
『ファフナー』に比べてかなり認知度も人気も低い雰囲気だけど、こちらもめちゃめちゃ面白かった。

はるかな未来、宇宙に進出した人類は、先に宇宙に進出した『銀の種族』に滅ぼされようとしていた。人類の若き王女ディアネイラは、戦闘母艦アルゴノートにて、人類の最後の希望=ノドスを捜索し、ついに見つけ出す事に成功する。人類のノドスであるエイジは、『銀の種族』を退け、人類を救う事ができるのか?(Wikiより抜粋)


何といっても冲方作品の魅力は、ピンチに誰かが助けに来たり、死を覚悟で頑張ったりする熱すぎる展開と、超緻密に練られたシナリオである。
ラストに「は?」となることなく「観てよかった~」と思わせてくれる。(『ファフナー』のラストは賛否両論だったらしいが、私は素晴らしかったと思う)

『ヒロイック・エイジ』も、伏線を次々に回収していった後に、あのエンディングはもう泣くしかないでしょう。


作品としてはSFの形態をとっているけど、実質的には神話だったと考えられる。

モチーフは多分ギリシャ神話。

そもそもの基幹設定となっている「黄金の種族」「銀の種族」「青銅の種族」「英雄の種族」「鉄の種族」はギリシャ神話の用語のはずだ。
エイジのモデルは、体に宿す英雄の種族の名前がベルクロスであることから、音の近いヘラクレスだと思う。。
他にもヒロインのディアネイラはヘラクレスの奥さんの名前だったり、宇宙船アルゴー・ノートも同様であり、他にも気付いてないだけで一杯ありそう。


実質的に全能の“神”を表していた「黄金の種族」。
「黄金の種族」と同じ世界へと旅立っていった「銀の種族」さらにはディアネイラもまた“神の領域”へと到達したんじゃないかなと。
ディアネイラが不在となる世界は再び神の時代が終わり、人類がさらなる発展を目指して進んでいくことになる。
そういった神話的な意味合いをエンディングで感じた。

シナリオだけじゃなくて、『コードギアス』みたいにイキりすぎて、つい笑っちゃうような演出を避けてるのも『ファフナー』同様のスタッフの良さだと思う笑。

正直『ファフナー』よりも『ヒロイック・エイジ』の方が好きだなぁ。タイトルにめげずに観て欲しいっす。


まだ観てないアニメの『シュヴァリエ』は好きなアニメ『KURAU』と同じ人がキャラクター・デザインしてるみたいで楽しみなことこの上なし。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-31 21:18 | 冲方丁

全19巻。
アフタヌーン
92~00年


good!アフタヌーンにて新シリーズが8年ぶりに開始されている。気になってたんで漫喫で旧シリーズを読んでみた。

もう、なんか凄すぎて何も言えねえ…。そこはかとなく北島っぽくなりましたね。あんまり今のテンションではいつも以上に大したこと書けなそうな気配で満ちているぜ。

必要と判断すれば即射殺する超絶アウトロー刑事の漫画なんだけど、…その密度、迫力凄すぎる。
こんなにカッコイイ、アウトローものは映画にもないと思う。
これはリアルタイムで読んでた人たちは、復活に熱狂するだろうなぁ。

基本的には単行本1冊で収まる物語が、何件も続く形。当時の社会的出来事が多くモチーフに使われている。(神戸の連続児童殺傷事件とか)
最初の頃こそ、いかにも初期の作品っぽい作画だったけど、連載が進むにつれて今の画にまで到達。
高橋ツトムの凛々しい美男美女は神!飯田刑事と相沢刑事がきてます。

ちょうど来月から完全版全10巻が発売されるんで、買おうと思う!っていうか高橋ツトムの作品全部集めたい!


多くの名ゼリフに彩られる作品の中から好きなものを一つ。
ーあなたにとって死とはなんですか?
ー敗北。

いつか言ってみたい笑。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-30 23:20 | マンガ

岩井俊二監督作品
1998年
主演;松たか子


あまり人に堂々と言えないような理由から、北海道は旭川から東京の大学へと進学した女性の期待と不安の日々を描く作品で、70分弱とごくごく短い映画である。

岩井監督作品は『花とアリス』と『リリイ・シュシュのすべて』の二つしか観たことないから、あまり詳しいわけではないのだけども、その画面の美しさが凄く良いなぁと思っていた。
『四月物語』でも画面の美しさは流石なもので、オープニングからしばらく続く桜吹雪の美しさは、日本人なら見とれてしまうこと請け合いである。

話としては、本当にアップダウンのない話であり、ハリウッド映画のようなエンターテイメントを求めて映画を観たら、メチャメチャ退屈すると思う。

ただ、主人公が大学に入学したばかりで、右も左も分からないままに馴染もうと試行錯誤する様に感情移入できる人は好きな映画だろうなぁ。


何より、引っ込み思案で、おどおどしながら「性格は明るい方だと思います」と自己紹介する主人公・楡野を演じる松たか子が素晴らしい。
ちょっとした仕草や表情に色々な感情が観られて、もううっとりしてしまうね(笑。

『花とアリス』の蒼井優の魅力も心を奪ってやまないものがあったけど、こういう演技を引き出すのも監督の力量なのだろう。

ラストも綺麗な終わり方で、そこはかとなくホッと落ち着く映画だった。やっぱり自分は岩井監督が好きなような気がする。色々観てみよう。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-28 23:50 | 映画

コミックリュウ掲載のショートコミック『第七女子会彷徨』第4話~第6話について以前も書いてみたが、続いて7話、8話についても書きやす。

【7】時空探査機ーDeep diver-
人型時空探査機“KG86”を経由して同じく探査機“フォトン77”が未来からやってきた。送信機の事故で3分後にネコが一匹、転送機を通ってこの時間軸にやってくる。生体を時空転送するとまったく別のモノに再構築されてしまうが、このネコと思われる謎の生物により街が破壊される事件が起きることになっている。“フォトン77”の目的は受信直後にネコを追放すること。しかし、もともと困難であったこともあり失敗。“フォトン77”は金やんと遊びに来ていて近くにいた高木さんに助けを求めるがー(16P)

【8】友達選定ーWander7-
全国的にほぼ全ての高校で、入学と同時に友達が一人組み与えられる制度がある。「友達」という項目が成績表にもあり、社会に出る際に重要な判断基準にもなる。金やんと高木さんも、筆記アンケートにより振り当てられた“友達”だった。
今日は、“友達”の面接試験ー(12P)


7話は1月号掲載、8話は現在発売中の3月号掲載。

時空探査機はSF濃度がかなり強い作品となっている。一応タイムパラドックスものでもあるし、なにより人型探査機の描写や台詞回しにSF小説っぽい雰囲気が出ている。今までで最長の16ページのボリュームも含めて読み応えのある作品だった。
金やんと高木さんはいつも通りだけど。

8話はお気に入り。「デジタル天国」と同じくどこか殺伐とした世界観のちょっとした良い話。奇行の多い高木さんをフォローする金やん。面接の担当の先生が「高木さんに不満はないのか?」と質問するところで、回想に入る。
「友達」制度自体に疑問をもつ金やんは高木さんに心を開くことが出来ない。そして最初から奇行連発の高木さん。仲良し二人組の出会いが描かれる。
面接試験で、金やんが何と答えたかは直接は描かれないが、最後のコマのセリフで予想は出来る。
作品名の由来も多分この話にあるのだろう。金やんと高木さんが「友達」に振り当てられた時の番号が7番→「“第七”女子会」と。いや、まぁ元々は『第七官界彷徨』って小説から着てるんだろうけど。

相も変わらずの、何か酷いガールズトークが魅力的ですな。

前、石黒正数と作風が近いと書いてみたが、どうやらホントに石黒先生のアシスタントらしい(『それでも町は廻っている』4巻5巻のあとがきより)。
同じく石黒先生のアシスタントであり、ウルトラジャンプで「シュメール星人」を連載中のツナミノユウ先生ともども良い味を出している。

つばな・ツナミノユウ両先生ともオチのつけ方が上手いのだ。やはりアシスタントをしていると影響が出たりするものなのだろうか。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-24 21:26 | マンガ

以前、今まで読んだ中で一番好きなマンガとして冬目景の作品『羊のうた』を挙げた。
もう一つ同じ冬目景の作品についてグダグダ書かせていただく。

e0128729_0472111.jpg『イエスタデイをうたって』(通称;『イエうた』)は、mixiの冬目景のコミュニティ内で行なわれている「一番好きな作品」というアンケートで現時点において断トツの一番人気を誇る作者の代表作である。
自分にとっても初めて読んだ冬目作品であり、初めて集めた青年コミックであり、思い入れの深さは、それはそれは深いものでがある。
もはや「好き」とかそういうのとは別次元に自分の中に置かれているマンガといって過言はない。


超簡単なあらすじ
大学卒業後、フリーターとなった魚住陸生(リクオ)は、大学時代の同級生・森ノ目榀子(シナコ)のことが忘れられない。そんなリクオは、ある日カラスを飼ってる変わり者の少女・野中晴(1巻当時18歳くらい)と出会う。実はハルは中学時代に一度リクオと出会っており、その時からリクオに想いを寄せていた。
一方、リクオの想い人の榀子は、高校生の時に死んでしまった幼なじみがいつまでも忘れられずに一度帰った実家の金沢から逃げるようにして戻ってきた東京で教師をしている。さらに榀子の幼なじみの弟・早川浪(ロウ)もまた、幼少時からずっと榀子への不毛な恋を続けていてー。


という、主要な登場人物が皆、報われない想いの中に日々を過ごしている話である。
まぁコメディ要素も強い話であり、重かったり暗かったりすることはあまりないのではあるが。


『イエうた』は、平成10年にビジネス・ジャンプで連載が始まってから10年以上が経つが、既刊は6冊と、かなりゆったりとしたペースで続けられており、現在は半年ほどづつの期間でBIRZの『幻影博覧会』と交互で掲載されている。

もはや冬目景のライフワークと化している面もある『イエうた』は高橋留美子へのリスペクトも含まれていると考えられる。
榀子の幼なじみが回想で描かれる時にいつも顔が黒く塗りつぶされているところなどは、『めぞん一刻』でも同様の演出がなされているし、榀子自体にも管理人の音無響子の影響がありそうだし、穿ってみれば、ハルにも冬目景が同人誌を作り、「永遠のアイドル」というラムちゃんのキャラが反映されているとも考えられそうだ。


冬目景の作品は多くの魅力的な女性キャラに彩られてきたが、ハルと榀子の人気はその中でも屈指のものがあり、作品の人気の理由の一つでもある。ファンと会えば、「ハル派?榀子派?」の話題を振ると結構盛り上がる。ちなみに自分はハルちゃん派です。

物語は、恋の甘さ、切なさとかよりも、あまりに長い膠着状態による倦怠感、逆に変化が訪れると戸惑いを感じている様が出ているように思う。
全体的に、周りで何かが起きるという外的事象よりも、彼らが何を思うかという内省的な面が重視されており、そういった意味で文学的であるとさえ言える作品である。

また、半年のシリーズごとに中編の連作として様々なドラマも進んでおり、ハルの母親、映画作りに励む高校生達、ハルに片想いしていた高校の同級生の湊航一、リクオの高校時代の元カノの柚原チカ、浪の通う予備校のカップル(『ももんち』にも登場)と多くの人々が一時彼らと関わり、何かを残して舞台から去っていた。

劇中でも3年の月日が経ち、主要なキャラたちも、徐々に前向きになりつつあり、恋愛関係にも少しづつ変化の兆候がある。
とはいえ、未だ、リクオがハルと榀子とどっちとくっつくエンディングとなるかは不透明な節があり、目が離せない。

加えて、長い連載期間のために、絵の上手さ、演出の上手さ共に半端無い冬目先生の進化の歴史としても興味深いものがある。個人的には4巻以降に一気にレベルが跳ね上がった感があるかと。榀子先生は1巻とは同一人物かどうか分からないくらいのモデルチェンジをしてしまった(笑)。


オレにとっては、『イエうた』はもはや生活の一部である。休載していても掲載されていても常に心に引っ掛かっている。もし好きな本の登場人物になれる道具があったら、是非『イエうた』の世界に入りたいです(意味不明)。
完璧に冬目信者である私ですが、この思いを共有できる人とは仲良くできるであろうよ。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-24 00:43 | マンガ

プリンセスコミック/秋田書店/全3巻

作者のみもり先生は、現在「good!アフタヌーン」で『地獄堂霊界通信』のコミカライズを連載中である。
そっちを書くつもりだったんだけど、『アオハルッ!』抜きにはみもり先生は語れない!と思い立ちて、こちらを先に。

おそらく、みもり先生が漫画愛好家の中で認知されたのは『ひぐらしのなく頃に 宵越し編』の作者としてではないだろうか。
もともと自分は『ひぐらし』の原作に思い入れもなかったからってもあるだろうが、友人にコミカライズを全部借りて読んだ結果、一番面白かったのは番外編の『宵越し編』だった。

で、ある日、本屋に行ってみると、えらく表紙の可愛い少女マンガが目に付いた。帯を見てみると「『ひぐらしのなく頃に 宵越し編』のみもり先生 最新作」的なことが書いてある。
じゃ、買ってみようかいなと2巻までを買ってみたのが出会い。


『アオハルッ!』は『宵越し編』のようなオカルト要素が一切無い、完璧な少女マンガで中1の少年少女のハイテンションな恋模様を描いた作品である。

幼なじみの二条花日と名取いずみはそろって中学に入学。期待と不安を胸に新しい日々が始まった。
1年生には、席の近い人たちで班を作り、入学制作をつくるという恒例のイベントがあった。しかし、花日といずみの班のメンバーはみんなちょっとづつ問題を抱えていた。
若干ぐれ始めの兆候がある本郷呂澪(ほんごう ろみお)、呂澪との溝に悩む、呂澪の幼なじみ八広誉(やひろ ほまれ)、小学校時代に虐められて学区外の中学へと入学してきた森ノ宮新菜、ある理由から保健室登校中の妙典碧人(みょうでん へきと)。
彼らは無事に入学制作を完成させることが出来るのだろうかー



まず、作品の魅力として挙げられるのが、みもり先生の絵柄である。
濃いけどあっさりしている、というか。読みやすく、また躍動感があって良いのだ。キャラクターの可愛らしさが凄い。

次に、上にも混ざってるが、キャラクターの魅力。超可愛いです笑。自分はツンツンお嬢様こと森ノ宮新菜が一番好きなだったなぁ。
みんな個性的で明るい。次々に畳み掛けるようなギャグが面白くて、笑った笑った。
ワンピース型のセーラー服という変わった制服も気になるところ。

そして、無駄に拡散しないコンパクトさ。
いつ…中一の一学期
どこで…学校と森ノ宮宅
誰が…5班の6人が
何を…入学制作をする
と、いたずらに脇にそれることなくゴールへひたすら向かっていく。結果全3巻と手頃な長さでキチンと完結を迎えている。

ちなみに少女マンガらしく全校放送で告白というイベントもあり。


ラストには8年後、成人を迎えた彼らの姿が少しだけ描かれている。
まったくの根拠の無い話だけど、カップリングの未来を予想してみるに
花日といずみ…後に交際後、別れる。お互いに恋人はいるけど、今でも仲良し。
呂澪と誉…後に交際開始。現在も継続中。
碧人と新菜…比較的最近になって交際開始。
と勝手に踏んでいる。多分続きが描かれることは無いだろうなぁ。


現在、連載中の『地獄堂霊界通信』は『宵越し編』のオカルト要素と『アオハルッ!』の子供の魅力が反映されていて、かなり面白い。
みもり先生は他にも季刊誌の少女漫画誌でオリジナルの『くくりゃんせ』、ウェブコミックで原作付の『八百万』とあわせて3つの連載を持ち、売れっ子への道を爆進中のようである。期待!




黒澤映画の次が少女マンガと、混迷の模様が一層深刻化している節がある、私の駄ブログでした。

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-21 02:20 | マンガ

何故、今になって黒澤明なのか。
先月までなら没後10年で黒澤特集をテレビでやったりしていたのに。完璧に時期を外した感が否めないが、黒澤明監督について。

ここんとこ、漫画とかそっち系のものしか書いてなかったから、たまには映画についても書いてみようかなと、誰もみてないのに。


黒澤明監督は、いわずと知れた世界的な映画界の大巨匠である。
代表作の一つ『七人の侍』は誰しも聞いたことがあるだろうし、最近は『椿三十郎』や『隠し砦の三悪人』がリメイクされたりもしている。

しかしながら、映画が大好きな人を除くと、実際に黒澤明監督の作品を観たことあるという人は意外に少ないのが実情であろう。
事実、大学に通っていて2年半、黒澤映画が好きという友人とは未だ知り合っていない。ここには私に友人が少ないからという理由を頭から控除していただきたい。

これは映画に限らないけど、名作・傑作といわれるものが、初心者にはその良さが分からないということは良くあることである。
が、黒澤映画は私のような、専門的な知識が皆無の人間であっても、引き込まれ、感情を揺さぶられる作品がほとんどであった。

そんなわけで、まだまだ初級の私が観た中で、絶対的におススメの作品をいくつかあげたいと思いやす。


ただし、『七人の侍』は外す。メジャー過ぎて面白くないではないか!


まずは1960年公開の『悪い奴ほどよく眠る』

権力者に父を殺された青年の壮絶な復讐劇!
汚職まみれの公団の副総裁の娘の結婚式に、公団を模ったケーキに、罪を被らされて自殺した社員が飛び降り自殺をした階の窓に赤い薔薇が差されたものが、差出人不明で届けられるオープニングの時点で心奪われる。
主人公の西に感情が入りすぎて、かなりやばい状態で観ていた。

どうなんの?どうなんの?
と食い入るように見つめたままラストを迎えた後の虚脱感。

黒澤映画は時代劇のイメージが強いけど、社会派の作品も凄い。この映画が一番好きだなぁ。


つぎに、黒澤明最後の時代劇『乱』
1985年公開。シェイクスピアの『リア王』の舞台を戦国時代に移した翻案である。

戦国武将を演じる仲代達也の迫力が半端無い。
家督を巡る息子達の血みどろの争いに絶望していく武将の話といえばいいのだろうか。黒澤監督が「ライフワーク」とも言った超大作で、その迫力、映像美は昨今の邦画ではありえないスケールである。


こちらも、シェイクスピアの作品が原作、『蜘蛛巣城』
『マクベス』の翻訳モノ。ほぼ完璧な翻訳らしい。

物の怪に惑わされ、支配者へ道を登っていってしまった男の悲劇。

「そっち行っちゃ駄目だ~!」とテレビに向かって叫びたくなる作品だった。悪い妻も調子乗って男をどんどんそそのかしてるのみると腹がたってしょうがなかった。その妻が発狂する強烈なインパクトのシーンや、追いつめられた三船敏郎演じる武将に次々と矢が放たれる(なんとホンモノの弓矢使用)クライマックス等名場面多し。


ラスト、これも翻案『どん底』
原作はゴーリキーの同名作。

カメラをいっぱい使って、一発で撮影する方法で撮られたそうな。

超貧乏な長屋で暮らす人々の群像劇。一言で言えば、「救いが無い、観てられない」。黒澤映画には、結構悪女が出てくるけど、この作品に出てくるお杉もかなり強力な人間。鳥肌たつ。

貧乏長屋に暮らす人々はどん底から抜け出せるのか?答えは“なし”。彼らはどうなったのだろうか…。


他にも色々あるけど、ざっとこんなところで。
何といっても、練りに練られた完璧な筋立て、迫力、映像美。巨匠はやっぱり凄いです。

黒澤作品を観ていくと、絶対三船敏郎にはまる。カッコ良過ぎ!!

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-21 00:49 | 映画

斎藤岬という漫画家をご存じだろうか。

斎藤先生は1995年にデビューして以来、コミックバーズ(デビュー当時はコミックバーガー)及びその姉妹誌にて看板作家として活躍し続けている漫画家である。

『退魔針(原作/菊池秀行)』、『死神探偵』シリーズ、『ひなたの狼』、そして連載が終了間近の『DRUG-ON』と常に良作のエンターテイメント作品を描いているにも関わらず、バーズというあまりにもマイナーな媒体に掲載されているがゆえに、ヒットに恵まれていない感がある。


『DRUG-ON』が今月30日発売のバーズにて最終回を迎える理由も、どうやら幻冬舎が望むレベルの売り上げを単行本が出せていないらしく、新連載に切り替えることになったということらしい。

遠からず再開したいとは作者は言っているものの、以前連載していた新撰組を題材にした『ひなたの狼』も芹沢討伐で第1部を終えてから再開の見込みは立たず、姉妹誌で掲載中に休載となった『死神探偵』シリーズは再開に何年もの時間を費やすことになった。

これは必ずしも編集側が全ての責任を負うものでもなく、作者自身の原稿制作のスピードの影響を含めてのものでもあるそうだ。
しかしながら、あらゆる作家が原稿を落とすか休載を細かく挟むという状態のバーズにおいて、少なくとも私が雑誌を買い始めてからの1年半の間、一度も休むことなく、加えて表紙を隔月くらいのペースで斎藤先生が担当しているのであるから、描くのが特別遅いとは思えないのだが。



さて、『DRUG-ON』。
不思議な力を宿す泉を守る「狩者」テイカーたちの戦いの物語である。

画力・シナリオとバランスよくハイな技巧を持つ作者の作品であり、こんなにアニメ化しやすいものもないと思う。

テイカーには、パートナーとなる「従者」バレットという存在がおり、コンビで基本的に行動する。バレッドは、テイカーの肉体を原料に錬金術で人間に仕立て上げた不可思議な存在であり、バレッドはテイカーにとって「分身であり、娘であり、妻」(男目線、逆も然り)にあたる。

カイとアリス、ジャックとドロシー、ジルとピーターの3組のコンビが魅力的であり、その戦闘もかっこいい。


自分は斎藤先生の作品の中で、このマンガが一番面白いと思う。
であるがゆえに、全てを解決せずに最終回を迎えるであろうことはとても寂しいなぁ。

再開できなければ、同人ででも続ける意向を作者が示しているのが救いだよ。さすれば、まだ行ったことないコミケでもコミティアでも行こうぞ。


もし、斎藤先生を何らかの事情ででも放出することになれば、その時がバーズの終りの時になるような気がする。
冬目先生、PEACH-PIT先生、山田章博先生…。バーズコミックの単行本の売り上げと認知度向上に貢献したマンガ家は少なくないけど、雑誌に対する最大の功労者はやっぱり斎藤先生なのではないだろうか。
せめて、もう少しメジャーに!

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# by dentaku_no_uta | 2009-01-10 02:04 | マンガ