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民間企業、月へ!

『第六大陸』

最近、小川一水の小説にはまってます。
まぁまだ読み始めてからそんなに経ってないから、4作品のべ9冊しか読んでないけど、今日はその中の1作から。


個人的に小川一水の魅力は①アイディアレベルでの差別化②徹底的に描かれたデティールにあると思ってる。

基本的にSFを舞台に、人とは若干違う視点で物語を書くんだよね。
それにとにかく科学技術の描写が細かい!その正確さは文系の自分にゃ分かりもしないけど、こだわって創ってある感じがとてもいいと思う。


で『第六大陸』はどんな話かというと、2025年から10年計画で建設会社、レジャー企業、民間のロケット会社が月に結婚式場を作ると言うお話。

小川一水はジュブナイル小説もたくさん出してるけど、この作品は一般にハードSFに分類されている本格派。

世界一の技術力を誇る後鳥羽創建、画期的な新型エンジンのアイディアがありながら資金不足で実現できない天竜ギャラクシートランス社が真の目的がイマイチ分からない依頼主のエデン社とともに壮大な計画に挑んでいくプロジェクトX的な展開が熱い☆。

最初の中国の月面有人基地の視察からはじまって、6分の1の重力下での想定されるさまざまのシチュエーションが物語に織り込まれていて、まぁ細かい細かい!
このリアルさが良いんだよね!


ちなみに主人公は後鳥羽総建の技術屋・青峰走也とエデン社の会長の孫娘・桃園寺妙の二人。
物語の冒頭では13歳だった妙はエンディングでは24歳にまで成長。最初は萌えキャラみたいだったのにもラストではすっかり幼さも消えた大人に…。


自分的には圧倒的な資金とノウハウを持つNASAとの直接対決とか初の死亡事故あたりが読み応えがあって好き。



全体的にバランスもいいし、好きな小説の中なんだけど、物語設定の緻密さに比べて人物にあまりリアリティーが感じられないのがやや難かな。
個性あるキャラクターがステレオタイプにはまっててどこか漫画的なんだよね。
特に桃園寺一家のキャラ付けが気になった。

同じくハードSFに分類される『導きの星』ではそこまで気にならなかったんだけど、設定だけじゃなくて物語自体がリアルになっている分だけ、よりキャラクターが浮いちゃってると思う。


まぁそうだからこそドラマチックな展開になってるって一面もあるだろうから一長一短なところではあるんだけど。


とりあえず、『第六大陸』と並ぶ代表作『復活の地』は遠からず読むつもり。
こちらは他の惑星での災害復興物語。楽しみです。

by dentaku_no_uta | 2008-02-10 00:24 | 小説