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鯨井ルカはどこに消えた?あるいはサイン会について

『ネムルバカ』

石黒正数のサイン会行ってきたぞ~!

今までイベントごとに参加することは滅多に無かったんだけど、ある日突然好きな漫画家のサイン会に行かないことは猛烈に損だと気づく。
そんな折に石黒正数のサイン会の告知をHPで発見。

好きな漫画は数多あれど、『それでも町は廻っている』は相当好きな漫画であり、無事予約が取れたときは小躍りするほど嬉しかった。

で、今日。
元来あがり症なもので、自分の順番が近づいてくると緊張して手から汗が止まらない。
しかもてっきりタイトルのカラーページのところにサインしていただくだけだと思い込み、表紙の裏のところにイラストを入れてもらえるなど想定していなかったため、表紙を劣化防止用のカバーで思いっきり固定するという大ミスをしでかす。(結局最終ページの空白のところにイラストをいれてもらう)
っていうか今にして思えば帽子被ったままだったし。
なんかホントすいませんな感じではあったけど、とにかく無事石黒正数先生に会えて良かったよ。
春休みは冬目景先生のサイン本を買ったり、桐幡歩先生から返事をいただいたり、今敏監督にサインをもらったりと漫画・アニメに関する腰が抜けそうなほど嬉しいイベントが続いたけど、石黒先生のサイン会で締めくくられたのは最高だよ☆。


して今日のサイン会の対象だった『ネムルバカ』について。

『ネムルバカ』は大学の寮で二人で暮らす先輩・鯨井ルカと後輩・入巣柚実の“青春”を描く作品で、COMICリュウで連載。全1巻。

おそらくネタばれすると思います。未読の方はお気をつけください。

『それ町』に比べてかなりシリアスな仕上がりになってると思う。
最初のころは、『それ町』テイストの日常コメディーだったんだけど、風向きが変わり始めたのが第5話「チテイジン」。
この話もまだ笑いの要素も入っているけど、将来とか生きる目標といった漠然とした不安が目に見えて現れてくる。

「やりたいことのある人とやりたいことがない人の間に、何かしたいけど何が出来るのか分からない人ってカテゴリーがあって 8割方そこに属してると思うんだがね」
入巣の同級生のセリフより。
思いっきり大学生の自分としては、かなりきついセリフだ。
果たして自分はやりたいことをやっているのか?目標に向かって進んでいるのか?
思い返せば小学生の時は「漫画家になる!」と真剣に思っていた。まぁ路線変更を繰り返して今に至るわけだけど、将来のことはあまり考えたいものじゃないね。


6話で音楽で生きていこうとしていた鯨井が突然成功の道を歩み始めていくが、それは本来望んでいた形ではなかった。そして最終話ー。

6話のタイトル「ジンゾウニンゲン」=人造人間。目標に向かって生きていた鯨井に対してあまりにも悲しい肩書きだと思う。

やっぱりネタばれするわ。

最後ライブの会場から鯨井は脱走を遂げる。

自分が石黒作品が良いなぁと思うのは、演出の面で相当あの手この手を駆使しているところなんだよね。
脱走する直前、入巣には鯨井が自分に何かを言ったように見えたんだけど、何を語ったかは劇中明らかにされないんだよね。
答えはタイトルに。最終話「ゲンキデネ」=元気でね。

脱走後の次のページでは場面変わった寮の部屋に。そこでは第1話で部屋なされた入巣と鯨井の会話が再度なされているわけですよ。
ここで読者は「あぁ鯨井は帰ってきたんだ」と思うわけだけど、実はそれは“先輩”になった入巣と同室になった後輩の間でなされた会話だったという裏切りに会うことになる。


しかも読み返すと、第1話のオープニングの時点で、鯨井の失踪は予告されてるんだよね。第1話が鯨井が家出をして即見つかるという話だったから完璧騙されてたけど、あれは最終話につながってたんだねぇ。



物語の中で一番印象的だったのが鯨井が、“壁”の横のドアをくぐって反対側に抜けっていった場面。
この“壁”は心象として出てくるもので、成功を得るために、ぶつかった壁を打ち破ろうと必死になっていた象徴だった。しかし全ての努力を否定するようなドアを抜けて鯨井は反対側へと行ってしまう。
なんて切ない場面だろう!


今月号のリュウで番外編が掲載。
またしても作者に騙された。後日談だと思ってたのに!
2年前の鯨井は、モデルとなっている『それ町』の紺双葉とほぼ同じ。やっぱり髪の毛短いほうが可愛いと思うんですが、どうでしょう?

by dentaku_no_uta | 2008-03-23 22:48 | マンガ