カテゴリ:ライトノベル( 1 )

『よくわかる現代魔法』シリーズ

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桜坂洋のライトノベル作品。集英社スーパーダッシュ文庫で既刊5巻。一段落ついてから3年弱新刊が出てないが、まだ続くらしい。


タイトルは巻末についてた宣伝のページのキャッチフレーズからいただきました。

まぁアキバ系といっても泉こなた的なのがワラワラ出てくるわけじゃなくて、電気街としての秋葉原を全面に出した作品。
基礎となる設定が、「人間の肉体もコンピュータのCPUも同じく電気の流れる物体である」ことを前提として成り立っている。
つまりコンピューターのプログラミングで魔法を使うのが“現代魔法”という設定。コンピューターでは人間のような複雑なコード(プログラム)を組み立てることは出来ないが、同じコードをエンドレスに実行できる物量作戦が可能という利点がある。
ちなみにドラクエ的な魔法は“古代魔法”と呼ばれていて、効率が悪いため科学に取って代わられており絶滅寸前。

作者の桜坂洋は元システムエンジニアで、ゲームを含むコンピューター全体が趣味らしい、っていうか作品を読めば一発で分かる。
出てくるキャラクターが思いっきり作者の妄想を反映しているようで凄く良いと思うよ。
あとがきで自分がつくったキャラクターを「たん」づけで呼んでみたりするなかなか愉快な方です。

作中に突然
「そうだ。エミ。嘉穂は思い出した。彼女の名前は小野寺笑だったはずだ。たいした知り合いではない。(中略)ただ人工知能を搭載した伝説の十八禁ゲームに出てくるヒロインと同じ名だったので、嘉穂の記憶に彼女は鮮明に刻み込まれていたのだった。(4巻、30ページ)」
とかしれっと書いてあるから笑ってしまう。

他作品も自らのオタク嗜好をプッシュしたものが多くてかなり独特な世界観を持つ。2005年にハヤカワ文庫から出版された『スラムオンライン』もネットゲームを題材にした青春小説だったしね。
思い返せば昨年の11月。しばらく漫画ばかり読んでる。活字も読まねば、と思い本屋に行って手に取ったのが『スラムオンライン』だった。
自分の活字離れを止めた作品の作者ということで桜坂洋には実は結構思い入れがある。


『よくわかる現代魔法』シリーズは作者のデビュー作であると同時に唯一のシリーズもの。っていうかまだ全部で7冊しか著作がなく、そのうち5冊がこのシリーズなんだから占める割合はかなり大きい。

1巻ではまだまだ全体的に上手くないけどね、2巻以降はかなりレベルアップしていった感がある。300ページあった分量も2巻以降は200ページちょいと相当コンパクトな仕上がりになっていて読みやすいのも良い。
魔法を使った戦闘シーンがイメージが沸きやすい極めて視覚的な描写が多いのも特徴的(あるいはラノベ全体の傾向なのか?)。

最初は驚くほど目立たなかった主人公の森下こよみも3巻くらいになると随分とキャラ立ち。


シリーズ通してもっとも印象が強いのが3巻かな。
魔法で6年前の世界でプログラムのパスワードの手に入れるためにヴァーチャルリアリティの世界に森下こよみが飛ぶいわゆるタイム・パラドックスものなんだけど、これが凄いんだよね。

普通のタイム・パラドックスものと違って過去と未来がループしてるんじゃなくて、虚構の世界と現実がループしてしまっているんだもの。つまりここには現実世界も他の世界から観たヴァーチャルな世界でしかないという衝撃の事実が内包されていると思われ。
作中ではそれについては語られないけど、なかなか普通じゃない設定だよね。


締めとなった5巻もよかったな。
秋葉原を舞台にした魔法対戦。桜坂洋大爆発みたいな(笑)。
ラストはもう力技としか言いようの無い強引な方法で幕を下ろしたけど、物語り自体は面白かった。

新潮文庫刊の「七つの黒い夢」っていうオムニバスで番外編が書かれているくらいで新刊の情報なしっていうか単行本自体が3年近くとまったままになっている。別に引退したわけではないみたいなので、早く新作が出ることを願うばかり。


余談だが、『よくわかる現代魔法』シリーズのイラストを担当した宮下未紀もかなりレベルアップしている。表紙からだとよく分からないが、挿絵は別人のようになった。

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by dentaku_no_uta | 2008-04-11 00:09 | ライトノベル