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太田モアレ
good!アフタヌーン


11月7日、アフタヌーンの増刊号「good!アフタヌーン」が創刊された。
私は『地獄堂霊界通信』のみもり先生の作品が好きなこともあり、発売日の朝に大学行きがてら本屋で入手。


「good!アフタヌーン」は、談社がかなり力を入れて来たらしく、アフタヌーンの看板である藤村康介や沙村宏明のほか、高橋ツトム・石川雅之・麻生みことといった面子が連載陣に名を占める増刊号とは思えぬ豪華な雑誌となっている。

しかしながら、そんな綺羅星のごとく輝く執筆陣が描く第1話達の中で、私の心をズバッと射抜いたのは、初連載の新人・太田モアレの『鉄風』であった。


身長182センチの巨娘・石堂夏央は、どんなスポーツもすぐにこなしてしまう超絶な運動神経の持ち主で、あまり性格のよろしくない高校生。
そんな彼女を、小柄で眉の太い元気娘・馬渡ゆず子が(総合)格闘技に勧誘して…。


いい感じに性格のひねくれ曲がってる石堂が、第1話目にしてキャラが立っている。格闘技部に体験入部して、馬渡とスパーリングをすることになった石堂、楽しそうな馬渡を見て思う

「ああ…この感じ…この控え目に自信を隠した顔… その自信が砕ける瞬間を見るのは…嫌いじゃない

周囲から誤解されがちのでもなく、ごくごく普通に性格の悪い人が主人公のスポーツマンガってあまりないような気がする。
インパクトのある石堂と対になる形で、典型的な主人公のようなキャラの馬渡が輝いている。


さらに6ページしかないスパーリングのシーンの迫力だけで、格闘系の漫画としても今後に激しく期待できる。
どうやら石堂は空手、馬渡は(ブラジリアン?)柔術の使い手のようだ。
身長差もものともせず顔面に蹴りを入れてきた馬渡(しかも、打撃技は苦手といいつつ)に激昂する石堂!
これからどうなる!?
続きが読めるのは1月。気の長い話よ。



他、「good!アフタヌーン」では香月日輪の児童文学のコミカライズ『地獄堂霊界通信』(みもり)と「ハルシオン・ランチ」(沙村広明)が面白かった。

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by dentaku_no_uta | 2008-11-08 19:07 | マンガ

ハヤカワ文庫JA
2005年


『よくわかる現代場法』シリーズの桜坂洋の非ライトノベル作品である。

Aボタンをクリック。ぼくはテツオになるーー現実への違和感を抱えた大学1年の坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲーム<バーサス・タウン>のカラテ使い・テツオとして、最強の格闘家を目指していた。大学で知りあった布美子との仲は進展せず、無敵と噂される辻斬りジャックの探索に明け暮れる日々。リアルとバーチャルの狭間で揺れる悦郎は、ついに最強の敵と対峙するが……(裏表紙より)。

ちょうど1年ほど前に読んだ小説であり、初めての桜坂作品であった。
お気に入りの小説である。


私がこの小説を手に取ったきっかけは、toi8による表紙に惹かれたからである。e0128729_0145733.jpg

本編のワンシーンであるUFOキャッチャーの前に立つ悦郎と布美子を描いたものであるが、カラフルなのにどこか殺伐としており、何より布美子と悦郎の表情がとても魅力的であった。


さて、『スラムオンライン』の内容についてであるが、その最大の特徴は、現実世界とネットゲームの世界が交互に描かれる入れ子構造になっていることである。

現実世界で、悦郎と布美子が“幸せの青い猫”を探すプロセスと、ネットゲームの世界でテツオが辻斬りジャックを探すプロセスがリンクしているのだ。
ここで面白いのは現実世界はどこかリアリティーが欠如して描写されているのに反し、ネットゲームの世界は偽者であることを強調しながら、生き生きと描かれていることである。

常に安っぽい青空の世界、同じ表情から動くことのない人々。しかしながら、そこではプレイヤーからも独立したキャラクターたちによる社会が形成されている。

悦郎がヴァーチャルの世界から、現実世界で大切なものを悟っていくことになるプロセスは、ある種、アニメ『電脳コイル』にも通ずるものではなかろうか。


また、『スラムオンライン』の魅力として、格闘ゲームの戦闘シーンの面白さが挙げられる。

空中コンボの描写や、勝敗が決する場面の描写は、まさに格闘ゲームをプレイしている感覚である。
『よくわかる現代魔法』でもみせたオタクとして桜坂洋の一面がフルに出ていると思う。


さらに、作者の嗜好がふんだんにつまった布美子も魅力の一つであろう(笑)。
桜坂洋はメガネフェチとされているが、『スラムオンライン』においても眼鏡に関する描写が数箇所見られる。また仕草や喋り方に彼の嗜好なのではないかと思われるものが随所に見受けられ、ライトノベルにおける“萌”とは違ったキャラが形成されている。
布美子は、私の今まで読んだ小説における最も好きな女性キャラだったりするのであった(笑)。


さて、『よくわかる現代魔法』が2009年にTVアニメ化されるらしいが、『スラムオンライン』もアニメ映画化されたりしないだろうか。

そういえば、半年ほど前に発売された『よくわかる現代魔法』第1巻の書き直し編集版のあとがきに「2008年夏に、『よくわかる現代魔法』の最新刊をお届けすることを約束する」とかって書いてあったはず。
…今、何月?

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by dentaku_no_uta | 2008-11-08 00:12 | 小説

COMICリュウ
未単行本化



新人賞<龍神賞>出身・つばなの不定期連載中の短編連作シリーズ。現在発売中の12月号に6話目が掲載されている。


女子高生の高木さんと金村さん(通称・金やん)の二人組がSFチックな道具の溢れる不思議な世界で過ごす日常の話。

マイナー誌リュウに掲載されてる作品でイチオシのマンガである。とはいっても4話目から先しか読んでないから半分は読み逃しているのだが。


以下4話から6話の超簡単なあらすじを記す

【4】追憶の旅ーPromise meー
大掃除をしていたら“大切なもの”を無くしてしまった高木さんは、金やんを連れて、思い出したい時間の記憶を観れる<追憶屋>へと向かう…。(8ページ)

【5】デジタル天国ーExtra dates-
超プレミアのついたCDを貸していた、クラスメートの坪井さんが事故死してしまった!CDを取り返すため高木さんはデジタル天国へ行く…。(12ページ)

【6】食べたつもりガムーdayeat-
金やんより3キロも太っていることが悔しい高木さん。ご馳走を食べたつもりになるガムを駆使してダイエットに挑む…。(8ページ)


以上から分かるように、基本的に物語は高木さんが何かをしようとすることで始まる。ここで、高木さんは何故か常に上から目線で喋る人、金やんはいわゆる常識人のキャラクターである。


極めて短いページ数で起承転結をきちんとつける巧さが本作品の魅力であろう。
特に「デジタル天国」はそのアイディアも含めて秀逸である。

「デジタル天国」とは死んだ人間のデータを抽出・変換して保存している世界である。いづれ現実世界で【人工の体】が造られるのを待っているらしいが、当面は親の完全な監視下で暮らすことになっている。


この話はオープニングから面白い。

担任「はい 席着け~
   えー 出席を取る前にお知らせがあります
   昨晩……事故で入院していた坪井沙希さんが
   死んじゃいましたので日直は一人分繰り上がって 次 戸川だから今日よろしく
戸川「えー!坪井のやろう!!」ガガーン


この倫理観もへったくれもない世界で、生死を問う壮大なテーマっぽいのになされるのはスケールの小さい話。それでも、ちょっといい話の雰囲気も入れつつ綺麗なオチをつける。
巧い。
方向性としては藤子F先生の巧さに似ている。最近の作者では石黒正数が近いか。


10月号、11月号、12月号、さらに今月19日発売の1月号に掲載されているのに、扱いは何故か不定期連載。
本連載化が望まれる。
そして、このショートコミックはいつ単行本化か出来るだろう。09年に出来るのか?

今後が注目の作者・作品である。


余談だが、各話の後につけられてるサブタイトルは森博嗣の影響であると予想している。つばな先生は森作品を愛読しているようなので。

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by dentaku_no_uta | 2008-11-02 21:16 | マンガ

アフタヌーン
既刊1巻


女子柔道モノです。


木村紺というマンガ家、得体が知れない…。

デビュー作は『神戸在住』(アフタヌーン、全10巻)であるが、この作品では引越し先の神戸で大学生活を送る女子学生の生活を、大震災からの復興の様子を絡めて描かれている。

『神戸在住』の大きな特徴として、絵日記のようなシンプルな絵柄(実はかなり技巧的だが)で、等身大の人物の生活を丹念に表現されていることがあげられる。

膨大な数に上る登場人物、ストーリ性が無いようでよく練られた物語…、フィクションであることが信じられないようなリアルな演出が素晴らしい作品である。


…が!


e0128729_2347172.jpg『神戸在住』の連載中に連載が始まった『巨娘』(既刊1巻、11月7日発売のアフタヌーン増刊より復活予定)という作品。

なんとこちらは180センチoverの“巨娘”ジョーさんを主人公にしたギャグマンガ。

スクリーントーンの使用が見られるくらいで絵柄はあまり変わらないが、ぶっ飛んだキャラクターがわんさか出てくるハイなマンガである。



そして

現在連載中の『からん』は学園スポーツモノである。

立体感のある絵柄と動きのあるコマ割に一気に変更。


作風変わりすぎ!


幅広く色んなジャンルのマンガを描く人は結構いるが、ここまで作風が毎回変わるのはもはや異常!
一体、木村紺の核はどこにあるのか。

そして、何より凄いのが、ここまで大幅な作風の転換がありながら『からん』がメチャメチャ面白いことである


今現在、最も熱中している作品の一つ。


連載開始前の導入の部分で既にかなりの数の登場人物が出てきているが、ここら辺に『神戸在住』で培ったキャラの使い方のノウハウが活きてきそうだ。

導入の0章で出てきた人物に未だ10人も本編未登場のキャラクターがいる。(ちなみに0章で登場して、いままで出てきたキャラクターは12人、他主人公である高瀬雅及び九条京のクラスメートが1巻収録分に数名登場…やはり多い)
これから随分物語が進まないと出てこないのではないかと推測される人物も複数名存在し、これからどう進展していくのか気になるところである。


そして何よりも、『からん』の何よりの魅力は木村紺の織り成す天才的なストーリーテリングである。

中学生の44kg以下級で京都2位の実力を持つ高瀬雅は、弱小ながら主将を高校48kg以下級で全国大会優勝候補の大石萌が務めるお嬢様学校・望月女学院に進学する。
クラスメートの小柄な美少女・九条京を初めてみた時に、高瀬は自分と九条が夏に野原で向かい合ってる謎のヴィジョンを観る。
柔道部に参加するにあたって、高瀬は何故か気になる九条と、他二人のクラスメートを勧誘して連れて行くことに。

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常に嫉妬されながら生活してきた過去からなのか、高一にして巧みな世渡りの術を持つ高瀬とどこか不思議な雰囲気を持つ小柄な少女、九条。

まだ部活に入り始めたばかりで物語の序盤も序盤の場面であるにも関わらず、軽快な台詞回しと巧みな感情表現で、読者(というか私)をぐいぐいと引き込んでいく。


雑誌を買って読むことの楽しみを久々思い出した。
コロコロを買っていた小学生の頃のように、毎月『からん』の続きが気になってしょうがない。

あぁ木村紺は天才なんだなぁとぼんやり思う今日この頃である。

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by dentaku_no_uta | 2008-11-02 02:27 | マンガ